──愛情ホルモンを意味する<オキシトシン>という言葉も印象的です。

僕は脳の仕組みを学ぶのが好きなんですよ。人間は脳内ホルモンに常に影響されている生き物です。昨年、散々エンドルフィンのことを口にしてきましたが、「自分の身を守ってほしい」「精神を安定させてほしい」という気持ちが<オキシトシン>というワードにつながりました。自分の手で自分の体をさするだけでも、オキシトシンは出るらしいです。子どもがぬいぐるみを抱くことも、ペットを飼って撫でることも、そして、恋人同士が抱き合うことも精神の安定につながるとのこと。心の平和を大切にしよう、という曲ですね。

──<手をつないで行こう>というフレーズは、まさに<オキシトシン>の分泌を促す効果がありそうですね。

スマホやSNSの普及によって、誰とでも簡単につながれる社会のように見えながら、孤独感がヒートアップしている気がするんですよ。シリアスな話になってしまいますが、小中高生の自殺者が、昨今もっとも多くなっているという統計データがあります。みんなで真剣に対処法を考えなければいけない状況に直面しています。<バラ色の未来>という言葉を入れたのは、<Take it rosy>だけでは伝わらない部分があるかもしれないと考えたから。<バラ色の未来>は来ないかもしれないし、そんなの嘘かもしれない。でも、それでもいいんじゃないか、共同幻想でもいいじゃないかと思いながら、書きました。

──そうしたテーマは、デビュー当時から一貫していますよね。

30年経っても変わっていないところかもしれない。結局、良くも悪くもあまり成長してないっていう(笑)。

──言葉選びの感覚にも、オリジナリティーが現れているのではないですか?

<なるようにしかなんない>をあえて2回繰り返して、ソウルフルに歌うのがおもしろかったですね。2コーラス目では、<Everything’s gonna be alright>と英語でリズム&ブルースっぽく歌っていますが、英語よりも<なるようにしかなんない>という日本語を歌うほうが楽しいんですよ。

──『デンジャラス・ビューティー』の作曲・編曲は今井隼さんです。今井さんへの依頼は、初めてですよね。

イマジュンが我がチームに参加してから最初に発表するアルバムだったので、「試しに1曲書いてみない?」と確認してから依頼しました。「どんな曲がいいでしょうか?」と聞かれたので、「アニソンぽいのがいい」とリクエストしました。なぜならば、イマジュンは、年間何百曲もアニソンの演奏しているから。

──確かに、アニソンのテイストもありつつ、ラテンのリズムも導入された楽曲です。

リズムが難しい曲なので、全員が何度も反復練習をして、このグルーヴを体に入れる作業が不可欠でした。

──歌詞を書く際にポイントにしたことは?

ドラマ仕立ての歌詞にしようと考えていたので、妄想全開で書きました。<隠れ家的な店のバーカウンター>という説明的な1行目を思いついた時点でもうニヤニヤが止まりませんでした。クールぶっている30代後半の男性を主人公として、ストーリーを展開させていきました。美女と出会い、冷静さを保とうとしつつも、最後は酔っぱらって旅行に誘うという(笑)。

──主人公と及川さんとの距離は?

僕とはかなり違いますが、<ゴルフが苦手><鉄火巻きが好き>といった設定に関しては、僕のリアルな属性が混ざっています(笑)。

──<鉄火巻き>って、歌の中で聴くと、どこか英語的な響きもありました。

そそうなんですよ。言葉に関しては、よそ様が使わないであろうフレーズをいかに取り入れるかを、常に考えていますね。30年歌詞を書き続けていると、常に新たな言葉を開拓する努力が必要だと思っています。

──今井隼さんに発注して、一緒に作業してみて、いかがでしたか?

しっかり者で作業も早い。今後もアレンジや曲作りで協力してもらうことになると思います。おもしろかったのは、イマジュンが今まで一緒に作業してきたメンバーを連れてきてくれたこと。ベースの村上聖さん、ドラムの菊嶋亮一さんとの新しい出会いがあって、新鮮な気持ちでレコーディングに臨めました。

──『心配性エレジー』は、御供さんが作曲・編曲した曲です。コミカルな楽曲でありながら、ホーン・アレンジがクールで、スリリングな構成になっています。どうして心配性をテーマにして書いたのですか?

御供くんの楽曲って、なぜか彼の仮歌に引っ張られるところがあって。つい、おもしろい歌詞を書かなきゃいけないという意識になってしまうんですよ(笑)。

仮歌の段階で、具体的なフレーズが入っていたんですか?

<俺のサンバにとにかくついてこい>というフレーズをただくり返す仮歌でした(笑)。最終的に、僕自身の性格をおもしろおかしく歌うドキュメンタリーになりました。

──歌詞で描かれていることは、そのまま及川さんに当てはまるのですか?

まんまですね(笑)。<中華のテーブル グルグル回せない>というところは、神奈川県民ホールのライブ後に、打ち上げで中華街でご飯を食べた時のことがヒントになりました。師匠は平気でグルグル回すんですが、僕は遠心力が気になる性格で(笑)。<ヒールで階段降りる娘 マジこわい>というフレーズも、ワンマンショーで舞台セットの階段を、さっちんとゆうこりんが高いヒールで上り下りする時に感じるヒヤヒヤなど、自分の日常風景を切り取ってみようという発想で作りました。

──『明日も。』は、ポジティブなギターサウンド全開のロックです。

さすがロック先輩です。アルバムをバラエティ豊かにするためにも必要な曲だなと感じました。楽しいアルバムにすることが大前提ではありますが、伝えたいことはしっかり伝えるべきだなと思いながら、歌詞を書きました。『GO AHEAD!!』の続編的な作品で、『GO AHEAD!!』を聴いて育った少年の17年後のイメージです。だからこの歌の主人公は、20代後半の男子。

──<悔いなど残してなるものか><迷わずに一歩ずつ 走りだす>など、ポジティブなフレーズがガツンと届いてきました。

僕の中には、今もなお“燃えている自分”が存在しているということなんじゃないでしょうか。『Take It Rosy』の中で<建設的妥協>という言葉を使いましたが、自分の中でどうしても妥協できない部分、諦めきれない部分を描いた曲になりました。