──『スターダスト・カーニバル』は、「ハーイ、ミッチーです」という言葉から始まるところも画期的です。

なんの迷いもなく、ミッチーの曲です(笑)。そもそも、いきなり、<スターです☆>って歌う人は、僕以外にいないんじゃないかな(笑)。

──確かに(笑)。

『スターダスト・カーニバル』というタイトルもすぐに浮かびました。

──ライブでの観客とのやり取りの光景が目に浮かぶ曲で、“M・I・T・C・H・Y”というイニシャルのコールも入っています。

ビッグバンドジャズに挑戦したいというのは長年の夢でしたが、最終的に、ディズニーみたいなエンタメ曲として結実しました。具体的にいうと、『アラジン』のジーニーが登場するシーンのような感じ。

──間奏は映画『007』的ですよね。

そうです。くわっちの旗のもと、ブラス隊が12人参加してくれました。全員で一斉に演奏することでしか得られない迫力がありました。うれしくて楽しくて、大興奮でした。

──歌詞に関しては、<Welcome to paradise>というフレーズに象徴されるように、ポジティブで明るい空気が漂う曲です。<嫌なこと全部忘れちゃおう>という歌詞もあって、生きづらい現実という前提があるからこそ、このアルバムの“明るさ”が際立っていますよね。

そこは作家としての僕の個性なんじゃないかな。ダンスミュージックとは“悲しみの処方箋”ですから。僕が普段よく使っている言葉で表現するならば、“ネガティブの逆ギレ”(笑)。

──ボーカルはどんなイメージで?

ミュージカルっぽく歌おうと考えていたので、顔の表情筋を駆使しました(笑)。どこまでリスナーに伝わるかはわかりませんが、声に心を乗せて表現すべきだと思っているので、本当に踊りながら、演技しながら、そして笑いながら歌っていました。

──『FAKE IN LOVE』があがってきての印象は?

かーくんとは付き合いが長いんですが、“シンセの魔術師”だなと改めて感じました。ギター以外の生楽器の差し替えはまったくなし。データの段階でほとんど完成していました。彼の場合、この音色でなければいけないというこだわりがあって、徹底的に作り込んだデジタルサウンドなんですよ。

──今の時代に、このデジタルサウンドが新鮮に響きます。

この曲については、“昭和100年の歌謡曲”と表現しています。

──『FAKE IN LOVE』のフェイクというテーマは、今日的ですよね。生成AIの普及によって、擬似的なものを本物のように作れる時代ですし。

<加工しがちな写真では 伝えきれぬ君の魅力>と歌詞にも書きましたが、いくらでも修正できちゃう世界に生きているわけで。恋愛に関しても、何が本当かわからず、疑念を抱いている男を主人公にしました。でも、振り回されるのもやぶさかではないということですよね。<ファム・ファタル>という言葉が出てきた時には、スカッとしました。今まで使ってこなかったワードが出てくると、とても気持ちがいいです。

──明るい曲調の楽曲が多く収録されているアルバムの中で、こうした陰影のある曲が入ってくることで、バラエティーに富んだ構成になっているところもいいですね。

バランス的に、マイナーコードの楽曲が1つか2つはないと、飽きちゃうかなと。ただし、重苦しいロックやバラードは今回は必要ないと判断しました。

──サビが連なっていくような展開も特徴的です。

歌謡曲的ですよね。あと、この曲のポイントはボーカルのボコーダーギミック。かーくんの得意とするところですね。JUONくんのギターも最高です。

──アルバムタイトル曲の『Take It Rosy』は、ミッチー色全開のファンクチューンです。

アルバムタイトルを決めてから作った曲で、僕の大好きなミドルテンポのファンクですね。これまでもさんざんやってきましたが、思い入れがありますし、今の日本の音楽シーンで、こういうファンクをやる人もいないでしょうし。オリジナリティーの追求として挑戦しました。

──<手をつないで行こう><バラ色の未来><心はいつもそばにいる>といったフレーズに込められたメッセージが、今の時代にしっかり響いてきます。

今回のアルバムで伝えたいことをほとんど詰め込んだ歌詞になりました。作詞家として、<建設的妥協>という言葉を思いついて、歌の物語が広がりました。欲張れば欲張るほど、自分を追い詰めることになるし、その一方で、みんな、努力は辛くて、したがらないわけで。それではどこにも行けないから、諦めることも大事なんじゃないかという、大人でしか歌えない歌ですね。

──デビューしてから30年活動してきたからこそ、たどりついた境地ということですか?

どうでしょうか。むしろ僕自身に対しても言い聞かせている歌なんじゃないかな。「いい加減、少しは妥協して生きていきなさいよ」って。