デビュー30周年となる2026年5月6日リリースの最新作『TAKE IT ROSY!』は、オリジナルアルバムとしては通算21枚目、前作『DON'T THINK, POP!!』から約2年ぶりの作品である。カラフルでバラエティーに富んでいて、明るくてポジティブなパワーにあふれている。聴けば、自然に胸の中まで華やいでくるアルバムなのだ。戦争、経済不安、格差社会など、未来が不透明で、生きづらい時代だからこそ、“バラ色の未来”をイメージして、日々を笑顔で送ることの大切さを歌っている。新作に込めた思いや制作エピソードなどについて、じっくりと話を聞いた。

──30周年を迎える2026年にアルバムを出すことは、いつ頃から決めていたのですか?

『DISCO☆ENDORPHIN』ツアー(2025年5月3日~7月25日)が始まってすぐの頃ですね。2026年は30周年のアニバーサリーイヤーになるので、お祭りムードたっぷりの華やかなアルバムを作ることは決めていました。ところが、とてもありがたいことではあるのですが、ドラマ『ぼくたちん家』(日本テレビ系で2025年10月~12月放送)が決まり、主演ということもあって、スケジュールが詰まってしまったため、アルバム制作のために想定していた期間が後ろにずれこんでしまい、年が明けてからの制作となりました。構想半年、制作期間は2か月。頭も心もフル稼働でしたね。

──限られた期間の中で、集中しての作業となったわけですね。

もう全集中して、『鶴の恩返し』みたいに引きこもって作っていました。

──アルバム制作のとっかかりとなったのは?

“ROSY”という言葉です。30周年のアニバーサリーということもあり、“バラ色”をテーマにしようと決めました。僕にとって、“バラ”はデビュー当初から深い関わりのあるモチーフですし、『バラ色の人生』という代表曲もあります。“バラ色”から“ROSY”という言葉が思い浮かび、“ROSY”で調べたところ、“明るい未来”や“楽観的”といった意味でも使われる言葉だとわかって。 “気楽に行こう”、“TAKE IT EASY”という言葉を連想し、そのもじりで『TAKE IT ROSY!』に決めました。

──確かに今の時代では、“明るい未来”や“楽観的”といった言葉がかけがえのないものとして響きます。

今のご時世、悲観していてもきりがないし、生きづらいだけなので、開き直って“楽観的に行こうよ”ということですよね。『TAKE IT ROSY!』は、びっくりマークをつけるかどうか、さんざん悩みましたが、つけました。

──びっくりマークをつけた決め手は?

つけないと、明るさが少し足りないかなと(笑)。要は景気づけ。名前の画数じゃないけど、その1文字で大きく変わるかもしれないですし(笑)。

──アルバム制作の具体的な流れを教えてください。

『DISCO☆ENDORPHIN』ツアー中に、バンドメンバーのあらケン(荒木健さん)とイマジュン(今井隼さん)に曲を発注しました。あらケンに発注したのは『スターダスト・カーニバル』と『明日も。』。イマジュンに発注したのは『デンジャラス・ビューティー』。『スターダスト・カーニバル』に関しては、あらケンに「ビッグバンドジャズのアレンジを取り入れたい」とオファーし、参考として、ブライアン・セッツァー・オーケストラの『Sexy, Sexy』を聴いてもらいました。ただ、僕自身、ビッグバンドジャズは初めてのチャレンジだったので、そのジャンルが得意なサックスのくわっち(鍬田修一さん)にブラスアレンジをお願いしました。

──『スターダスト・カーニバル』は、アルバムのテーマを象徴する楽曲ですよね。

この曲のアレンジが固まれば、華やかで賑やかでゴージャスというアルバムの世界観を構築できるだろうと思っていました。くわっちに大感謝ですね。

──バンドのメンバー以外の人へも、ツアー中に発注したのですか?

親交の深いコンポーザーに、それぞれの特性を活かした発注をしました。例えば、去年の夏、大阪公演を観に来てくれたかーくん(大久保薫さん)には、「昭和の歌謡曲・ポップスを今のサウンドでやりたい」とオーダーして、『FAKE IN LOVE』があがってきました。期待通りでニヤニヤしましたね。僕は筒美京平さんや馬飼野康二さんからも強く影響を受けていますから。

──『CRAZY A GO GO !!』『パズルの欠片』『君の罪、僕の雨。』は、筒美京平さんが作曲した作品でした。歌謡曲はファンクと並ぶ、及川さんのルーツ・ミュージックですもんね。

そうですね。で、御供信弘くんには、「『マツケンサンバ』的な楽しい曲、頭を空っぽにして踊れる曲がほしい」とオーダーして、『君はトレビアン』があがってきました。『ぼくたちん家』のセリフ覚え、撮影などで追われている間、同時進行で彼らがコツコツと楽曲を作ってくれたからこそ、アルバム完成にこぎ着けたわけで、持つべき者はやはり仲間ですね。そのおかげで、正月明けから、「さあ、歌詞を書きまくるぞ」と創作モードに切り替えられました。

──アルバムの1曲目『30周年のマーチ』は『鉄腕アトム』のオープニング主題歌を彷彿させるマーチです。

『鉄腕アトム』の主題歌と『ぼくたちん家』の劇中BGMを参考にして、日常を元気に力強く歩んでいくイメージで制作しました。

──ドラマ『ぼくたちん家』に主演したことも、アルバム制作に影響を与えているんですね。

多分、その頃の僕のモードがまだ波多野玄一さんだったんでしょうね。

──『30周年のマーチ』はワンマンショーツアーの幕開けの曲を想定して制作したのですか?

そうです。ローズ高野さんに、「高校の吹奏楽部が演奏してるイメージで」とオーダーして、細かなところは、口頭で楽器のニュアンスを伝えて構築していきました。高校の吹奏楽部というのは、プロっぽくなりすぎない、青春のフレッシュさがポイント。ちなみに、冒頭のホイッスル、僕が吹いています。

──どうしてホイッスルを吹くことにしたんですか?

プリプロをやっていた時は、打ち込みで、デジタル音源の笛だったんですけど、ある日高野さんが100均でホイッスルを買ってきたので、これは生で吹くしかないなと(笑)。

──始まりのパワーが詰まった曲ですね。

プリプロの時点で、歌詞はすでに思いついていました。1曲目の『30周年のマーチ』はオープニングのインストゥルメンタルとして作りましたが、歌詞も同時に浮かんできました。日頃のご愛顧、ベイベーたちへの感謝の気持ちを込めた1曲がほしかったんですよ。ビクターのディレクターからも、「この歌詞はおもしろいから、おまけとしてワントラック、作れないか」との提案があり、合唱のアイディアが出てきました。それが9曲目の『30周年のマーチ~合唱~』です。

──合唱のアレンジはディレクターの今井千尋さんなんですね。

彼は多重録音大好き人間なので、思う存分、腕をふるってくれました(笑)。

──この合唱の参加メンバーは?

僕、今井千尋くん、御供くん、あさみん(Asamiさん)、まなみん(MANAMIさん)ですね。合唱コンクールのイメージでお願いしました。ポイントにしたのは朗らかさ。最初にスタジオに用意されたのがアップライトピアノでしたが、グランドピアノに替えてもらいました。音響も音楽室ではなくて、体育館で鳴っているイメージをリクエストしました。レコーディング、なかなか楽しかったです。